1993/2/22 藤井猛四段—大島映二六段(NHK杯)

感想

大島映二六段との一戦。

藤井四段は四間飛車。前回は大島六段の居飛車穴熊に屈したが、本局の大島六段は天守閣美濃を採用した。そう言えば美濃囲いを作るとき、いつしか☗3八銀ばかりになり、☗3八玉という符号は見なくなった。

藤井四段の構えは☗3七桂を急がず☗2八玉の形。大島六段は☖5五角~☖7三角とし、お互いに角で玉を睨む形となった。

中盤の攻防は私には難しく、非常に勉強になった。44手目☖5二飛の局面は☗5四歩が成立しそうに見える。しかし藤井四段の指し手は☗8八角だった。

ここで☗5四歩とすると、☖同銀☗5五歩☖6六角☗同角☖6五銀でハッキリしないようだ。そうと分かれば5五の歩はむしろ相手に取って欲しく、手渡しや☗9七角を含みに☗8八角を引いたのはなるほどと思う。52手目☖5三金までいけば中央の圧力が凄まじく、先手十分に見える。

62手目☖5一飛の局面も、すぐ☗5二歩と打ってしまいそうだが、本譜は☗9七角だった。

☗5二歩☖6一飛☗5四飛☖6三飛。これでは手数を掛けて敵陣に成り込んだ銀とお荷物のような金の交換となる上、先手の飛車に未来が見える。☗5二歩のような手では今までの良さが失われてしまうのだろう。☗9七角は☗8八角を活かしており、指されてみれば綺麗な手に見える。

本譜は大島六段が技をかけに来たが、藤井四段は堂々と応じ飛車の交換になった。

後手の金はそっぽに行き、藤井四段らしい「駒を遊ばせる」狙いが実現している。角を成って後に☗7五歩と遮断したのもこの方針に沿った手だった。

以降は後手の攻めを催促し、指し切りに持ち込んだ。最終盤、☖2五歩に☗3九桂☖4九金打に☗2七桂!が面白い手だった。☖2六歩が桂取りだが、☗2四飛で助かっている。重い金を打たせて後手の望みを完全に断った。

NHK杯予選3連勝。デビューから2年連続で本戦出場を決めた。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

中盤の攻防から徐々に良くしていったグラフになっている。800点が200点になっているとしても、それで良いと読み、自信を持って手を進めているのであればあれば何ら問題はない。藤井四段の快勝譜だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第43回NHK杯争奪戦予選(主催:NHK、日本将棋連盟)