1993/7/13 佐藤秀司四段—藤井猛四段(順位戦)

感想

順位戦第2回戦は佐藤秀司四段と対局。順位戦はここまで藤井四段1勝、佐藤四段1敗。

本局のオープニングは藤井四段の四間飛車に佐藤四段の☗5七銀左急戦。ただし、オーソドックスな形ではなく、藤井四段はいわゆる☖4一金型四間飛車に構え、その後☖5四歩型でも☖6四歩型でもなく、☖3二金型に構えた。

本局は『四間飛車の急所 第4巻』に、応用例として自戦解説が載っている。☖3二金型定跡編とこの自戦解説を見比べて読むことで本局への理解が深まり、興味深く棋譜を並べることができる。

佐藤四段は☖3二金型に棒銀で攻めてきたが、そこで☖6四歩としたのが不急の一手という。

本譜のこの後の進行を見ると、『四間飛車の急所 第4巻』の定跡編に比べ☖4二金とできていないのがよく分かる。そして、それが祟っていることも。

40手目☖4一飛からの藤井四段の指し手はどこか苦しそうだった。定跡編では☖5五歩から捌きに行くが、本局は☖3二金が浮いてしまうため捌きに行けない。☖4一飛は苦心の手だった。それでも馬を自陣にひきつけ、左桂を活用し、悪くないようにも見える。しかし一歩損の歩切れであることが大きく、振り飛車側からなにかすることができない。藤井四段の考慮時間は、60手目にして5時間を超えた。自戦解説によると49手目☗3八飛が好手で、☖3四歩と打たされたのが大きかったようだ。

佐藤四段は厚みを作るのが上手く、どんどん形が良くなっていく。金銀を動かしているだけで差が広がっていくように思えた。

それでも藤井四段はあの手この手でアヤをつけていく。歩だけでここまで手が作れるのはさすがだった。

94手目☖5四銀からの手順は大きな駒損になるが、形作りの進行ということだと思う。一気に攻め込む形となったが、渡した駒で後手玉は仕留められるところなった。

自戦解説では「完封」の文字があった。☖6四歩という緩手一つでここまで苦しくなってしまう怖さを感じるが、定跡手☖4二金と寄る手の意義を強く感じることができる将棋でもあった。勉強するという意味では本局は格好の教材だ。

順位戦成績は1勝1敗。序盤での黒星は痛いのは間違いないが、順位も良いので1敗のままであれば十分にチャンスはある。次戦以降も楽しみに並べていきたい。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

思いのほか互角の時間が長いが、実戦心理ではもっと早い段階から先手に振れていたと思う。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
  2. 藤井猛著『四間飛車の急所 第4巻』(浅川書房)

棋戦情報

第52期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)