1992/4/24 藤井猛四段—神谷広志六段(新人王戦)

感想

神谷広志六段との新人王戦。神谷八段は非常に良いキャラだと思っていて、もっと解説やコラム等が出てくれば良いのにと思っている。新人王戦は前局からかなり間があいた気がする。

本局は藤井四段が3手目に☗7五歩としてからの石田流、それに対して神谷六段が棒金を採用。☖5五歩にも見られるように、とにかく抑え込もうとしている。藤井四段は☗7七桂を跳ねており、この抑え込みをどう解決するのか。こういうテーマがはっきりしている将棋は素人でも序盤からワクワクするものがある。

36手目☖9五同金はやや驚き。神谷六段は飛車を抑え込むのではなく角の方を抑え込みつつ飛車を捌きに出た。これに対して☗7四歩~☗6四角~☗9五香は当然とも言える捌き。抑え込まれそうな角を捌いて角金交換であれば、玉形が違い過ぎて振り飛車が十分と思う。その後藤井四段は飛車も捌いた。神谷六段の当初の思惑とは掛け離れた世界のはずで、中盤は振り飛車がかなり良いと思う。

とは言え75手目☗4八金打には唸った。案外☖9九飛成が受けづらいと思ったが、こうして金を投資してしっかり受けるのが振り飛車の心。持ち駒は銀1枚になるが、桂を入手できる見込みがあるので☗2五桂(☗4五桂)だけで勝とうとしている。

☗4八金打で玉が狭いと見て神谷六段も端攻めをしてきたが、☗2六歩が懐を広げつつ☖2四桂にプレッシャーを与え、☖2五銀も防いで少なくとも一石三鳥はありそうな好手。95手目☗7二馬も☗6三馬とのセットなので勇気がいる手だが、自陣が問題ないことを見越している。藤井四段が自信を持って落ち着いた手を指せていることが分かる。

最後の寄せも好手☗2四銀が出た。この手は並べながら自分でも見えたので嬉しかった。

本局は振り飛車の理想的な勝ち方。非常に勉強になった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

振り飛車がかなり良いと思っていた中盤は互角で、優位を拡大したと思った87手目☗2六歩は後手の方に1000点程度振れている。信じられない……。全然形勢判断ができない。対局者の形勢判断はどうだったのだろうか。これまでも色々間違ったものの見方をしているが、評価値とのギャップで言えば今回が一番驚いた。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第23期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)