1994/3/10 川上猛四段—藤井猛四段(王将戦)

感想

川上猛四段との対戦。川上四段とは2戦目。前局は約半年前の順位戦で、千日手局を藤井四段が制した。

本局は藤井四段の四間飛車に川上四段が持久戦急戦どちらもありそうな駒組みから21手目☗5七銀で持久戦調の態度を示した。前局の千日手局では川上四段が☗9六歩から穴熊に組みに行っており、藤井四段も穴熊を警戒しているような駒組みを進めていたが、☖6四歩☖7四歩に反応し25手目☗5五角と変化した。

☗5五角~☗3七角で後手玉を狙い撃つが、藤井四段も自然に高美濃に組み、☖7三桂~☖4五歩~☖5六銀と、逆に後手の方が先手玉に厳しく攻めることができる格好になっている。ここは藤井四段が作戦勝ちになっていると思う。

川上四段は☗8九玉と角筋を避けるが、今度は一転☖2二飛から横から仕掛けられる形にした。

いつでも仕掛けられる形になっており、藤井将棋の機敏さが出ている。これで先手は玉を固めにくくなったと思ったが、それでも川上四段は堂々と銀冠に組みに行った。当然藤井四段は☖2四歩と仕掛け、☗2六歩と謝らせて優位を拡大した。藤井四段は☖4四角~☖3五歩と、ここからさらにポイントを挙げにいった。単なる歩交換ではなく、☖3四歩がいなくなったことで☗2五歩に☖3四飛と横に逃げられるようになったのが大きい。続く☗2四歩にも☖2七歩がぴったり。先手は銀冠に組んだが、高美濃に手が突かず、陣形差よりも大駒の働きだけで後手がかなり良さそうに見える。62手目☗5五角は非常手段のようで、藤井四段は自然に対応して飛車角を成り駒に昇格させた。

優勢と思われる局面で、72手目☖9五歩が高美濃から銀冠への端攻めで痛快。

☗9五同歩なら☖9八歩が厳しく、☗同銀に☖9六歩からどんどん攻めが生まれそうだ。銀冠の崩し方として勉強になる。

川上四段は☗3九歩と攻めを遅らせようとするが、☖同馬から手に乗って馬が銀冠に襲い掛かる。そして手にした金を使ってあっという間に寄せた。藤井四段快勝譜。5日後の順位戦に弾みをつけた。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手15秒)

中盤以降まったく危なげのない展開だった。藤井四段快勝譜。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第44期王将戦一次予選(主催:毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟)