1994/12/19 藤井猛五段—堀口弘治六段(竜王戦)

感想

第8期竜王戦初戦で、堀口弘治六段との戦い。堀口六段とは4戦目で過去2勝1敗。

戦型は藤井五段の四間飛車に堀口六段の右四間飛車。目を引くのは初手☗6六歩!

おそらくは堀口六段の右四間飛車を想定した手で、☖8四歩と突かれない限りはその他の手を優先できる意味がある。本局は☖6二飛まで指されてようやく☗7六歩と角道を開けた。

☗7六歩に堀口六段は☖6五歩と突っかけ居玉のまま開戦。18手目☖6五同銀の局面は抑え込まれそうで怖い感じもするが、☗2二角成~☗7七桂が見習うべき対応。

☖6六歩なら☗6五桂☖6七歩成☗同飛で駒が捌けている。単に歩を打って謝るような対応は極力したくないが、具体的な対応を知らないとそれもできない。棋譜を並べる意義は、本局のような手筋を知ることにもある。

銀をバックさせ、23手目からは第二次駒組み合戦。藤井五段はコンパクトに金美濃に組み、駒組みしながら☗6六銀~☗5五歩とさらに後手の右銀を後退させた。攻撃的な右四間飛車は鳴りを潜めることになり、先手の作戦勝ちになったと思う。

38手目☖4九角は突然の打ち込み。☖7六角成が狙いだが藤井五段の☗6五銀はなるほどの対応だった。☖6四歩☗5六銀となると☖7六角成が実現するが、☖6四歩の瞬間に☗3九金と引いて角が死ぬ。ただ、角と守りの金なのでそこまで大きな得ができた訳ではない。玉が薄いので気を遣う必要がある。

47手目☗4五角は対右四間飛車に現れがちな角打ち。本局はこの筋違い角が思う存分働く。

☗8一角成があるため☖5四銀とがっちり弾く。☗3四角と出れば☗2三角打があるため☖3三金打とまたがっちり弾く。しかし☗5六角と引いて今度は☗8三角成がある。角1枚で堀口陣を翻弄している。駒を使わせたため先手陣も安全になった。ただ、☗5六角にも☖6五歩としっかり受けられ、いよいよ厳しい攻めを継続させることは難しくなった。

ところが53手目☗1二銀!という妙手があった。

香車が入れば☗3六香の筋がある。堀口六段は☖2二玉から体当たりで攻め駒を減らしにかかる。これも強気な対応だが、藤井五段にさらに☗2三角打という強手が出た。藤井五段が上手く攻めを繋げた。

66手目の局面は馬金桂の3枚の攻めであり、いきなり寄る局面ではない。そこで藤井五段は☗1五歩と遠くから4枚目の攻め駒を調達した。これが間に合えばと金と香車が攻めに加わることになる。その間先手玉に厳しい攻めが来ないことを確認した。

堀口六段は☖3二玉~☖4一玉と早逃げし、安住の地を目指す。しかしその間にと金が作られ、☖6三玉の瞬間に☗6六歩が入った。手を掛けて右辺に逃げ込んでも6筋には飛車と桂馬があり、どこまで行っても先手の攻めが飛んでくる。また☗1五歩から攻め込んだことにより先手玉が広くなっている。

まだ後手玉が寄るような局面ではないが、先手の攻めが切れず、それを上回る反撃筋も見込めないことから、この☗6六歩にて堀口六段の投了となった。藤井五段の快勝譜だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

激しい戦いだったが、右肩上がりの快勝譜。最終局面はめちゃくちゃ大きく点差がある訳ではないが、藤井五段が攻めに攻め、堀口六段の戦意を喪失させた。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第8期竜王戦ランキング戦4組(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)