1995/8/8 藤井猛六段—関浩五段(銀河戦)

感想

関浩五段との対戦。このカードは2000/10/30に行われた第42期王位戦予選という有名な将棋があるが、それが唯一の公式戦。本局は非公式戦で、『藤井猛全局集』がなければ世に出てこなかった棋譜かもしれない。改めて『藤井猛全局集』のありがたさを感じる。

戦型は藤井六段の先手三間飛車。対する関五段は天守閣美濃に組んだ。四間飛車の対左美濃藤井システムはますます完成度が上がっているが、三間飛車であれば世界が違う。藤井六段はあからさまな玉頭攻めの形ではなく、やや上部に厚い高美濃に構えた。

三間飛車にしたことで左銀は5七か6七を選べる。高美濃にしたことで、☖3一角~☖8六歩の攻め筋に対応しなければならず☗5七銀型にするかと思われたが、藤井六段は敢えて☗6七銀型にした。☖8六歩からの攻めは怖くないということだ。確かに後手の右銀は浮いているし、☖7三銀型だとしても捌き合って悪くないように見える。結局関五段は早い段階で☖8六歩からの仕掛けは敢行しなかった。しかし関五段としては角を引いて銀を7筋から繰り出していった以上、7~8筋から仕掛けていく構想だったと思う。それを組み合いの段階で防いだことに藤井六段の序盤の上手さが現れている。

中央で歩がぶつかりいよいよ中盤が始まった頃、藤井六段はさっと中央に飛車を転回した。これが☗6七銀型の狙いだった。大駒の可動域が広く、随分と振り飛車の景色が良い。

このまま振り飛車に良いようにされてはならず、関五段も8筋から反撃する。この仕掛けには通常☗6六角とかわすのが形だが、本局は中央の折衝も絡んでおり、中央に角を飛び出すことができた。続いて関五段は飛車の頭に歩を打ってきた。たまに見かける手筋で、よくあるのは☗同飛なら☖6四角と引いて王手飛車取りになるというもの。本局は王手にならないが、☖6八角成とできるということだと思う。以下☗8二飛成とするしかないが☖同銀☗同角成☖6七馬の捌き合いは先手が悪い。しかしこの歩の手筋には喜んで飛車を逃げ、8筋に歩を打たせた格好になった。一度8筋に飛車を回って、歩を打たせて4筋に行く。単に4筋に回るよりよっぽど良い。ここは振り飛車が相当大きなポイントを挙げたのではないかと思った。

そして後手の反撃に対応しながらどんどん駒を前に進めていく。高美濃の金も中央に使い、4筋に回った飛車の視界が開けた。なんと理想的な捌き方であろうか。そして敵陣深くに打ち込んだ飛車のタダ捨てが投了図。美しい図を残してくれた。

評価値

評価値(YaneuraOu(tournament128-cl4) NNUE 20240528/tanuki-wcsc34/1手15秒

序盤から主導権を握り、一度リードを奪えば寄せ付けないような強さがあった。持久戦ながら77手で快勝。


参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第4期銀河戦予選(主催:サテライトカルチャージャパン)