感想
宮田利男六段との対局。現在宮田門下の若手棋士が活躍してきているが、その宮田六段がまだ40歳の頃の将棋だ。
戦型は藤井四段の四間飛車に宮田六段が玉頭位取りを採用した。藤井四段は、玉頭位取りに対し有力な形の一つである☗6六銀型に構えた。玉頭位取りの対策は『四間飛車の急所 第1巻』に詳しい。また『四間飛車を指しこなす本 第3巻』も参考になる。
5筋の歩交換を目指す☗5六歩に☖6二飛としなかったのが珍しい。後に☖8四飛と浮いて6筋交換を防いだ。なにか後手から一気に攻めかかる手もありそうだが難しい。65分の長考で☗5六金と力を溜めた。この金上がりも対玉頭位取りではお馴染みの手だ。
45手目、ふっと☗5七金と金を引いて、いかにも☖7三桂を誘ってから再度の☗5五歩が、柔道で技を掛けるような呼吸だった。
一見本譜の順で受かってそうだが、☗6六金として☗7五金を狙ったのが力強い抑え込みだった。☗5六金はこの展開を見据えていた。本譜の展開は☗5七金と☖7三桂の交換を入れずともできたと思うが、入れた意味としては☗9六歩から飛車を取った後、さらに☗7四歩と桂頭攻めからと金づくりを目指せるということだろうか。
となれば後手としては焦る展開か。宮田六段は62手目☖6四歩と動いてきたが、藤井四段は後手の歩切れを突いて一方的に飛車を成り込む対応を見せ、一気に差が開いていった。
評価値
もしかしたら飛車を成り込む前から振り飛車が良いのかと思ったが互角だった。やはり飛車を成り込めてから一気に優勢になったようだ。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第41期王座戦一次予選(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)