1994/4/8 先崎学五段—藤井猛五段(王将戦)

感想

1994年度開幕。また藤井猛「五段」としてのスタートを切る。

初戦は先崎学五段との対戦。先崎五段とはこれが3戦目で、過去先崎五段の居飛車穴熊に2連勝している。本局、先崎五段は☗7五歩といきなり変化してきた。対して藤井五段は☖6二銀。それを見て先崎五段は☗2六歩。乱戦だ。藤井五段に研究勝負ではなく、力勝負でやろうと言っている。

藤井五段は☖6二銀を☖5三銀~☖6四銀と出し、早めに突かれた☗7五歩を狙う。その前に先崎五段が☗3四歩と横歩を取ったが、☖4四角☗3六飛☖2六歩として飛車の可動域を狭めたのが上手い対応。そうしてポイントを挙げ、悠々と☗7五歩を取り切った。

25手目☗5六歩は、自分の玉頭かつ相手の飛車先の歩を突くものすごい手。

取れば☗4四角☖同歩☗4三角ということだろうか。☖3三桂が冷静な対応で、☗5五歩から清算し☖5五同飛が王手。そして☖2五飛と回り、先ほどの☖2六歩の垂れ歩が活きた。結局先崎五段は☗2八歩と打たざるを得なくなった。先手の飛車の可動域も狭く、駒の損得はないがここは先手が良いと思う。

先崎五段は☗4六飛~☗3六歩と右桂の活用を図ったが、☖6四銀☗3七桂に☖7五飛と金取りの先手で飛車を横に逃がし、☖2四角が狙いすました一着。飛車取りが受からない。

飛車を入手した藤井五段は☖3七角成~☖2九飛と一気に攻め込んでいく。後手陣も☗2一飛と打たれる隙はあるが、☖3一金で弾けるのが心強い。先崎五段は受けに回るが☖4五桂と攻めが止まらない。51手目☗6六角は☗4六角が普通の受けに見えるが、☖3七桂成から再度の☖4五桂が厳しく受けにならない。そこで☗6六角とし、☖3七桂成に☗同玉と取れるようにしたが、先に☖3九飛成と取る手があった。

☗同玉に☖3七桂成で受け無し。☖3九飛成が投了図となった。

先崎五段の乱戦を真正面から打ち返した将棋。短手数ながら藤井五段の強さを感じられる将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

藤井五段が先崎五段の動きに上手く対応した快勝譜だった。43手目☗7六歩で大きく傾いており、☖3七角成からの強襲が成立していた。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第44期王将戦一次予選(主催:毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟)