1994/4/30 藤井猛五段—丸山忠久五段(早指し新鋭戦)

感想

丸山忠久五段との2戦目。前局では丸山五段の厳しい指し回しを実感した。

本局、12手目☖3二銀を見て前局同様力戦相振り飛車の雰囲気が漂う。この時期の藤井五段が7手目から☗7八銀~☗6七銀と上がったのは珍しい印象だが、丸山五段の力戦相振り飛車に対応するため、銀を早めに4~5筋に送りたい意図があったのではないかと思う。

藤井五段の左銀の動きを見てか、丸山五段は4筋からではなく2筋から左銀を繰り出していき、2筋に位を張った。藤井五段はその位から遠ざかるように振り飛車穴熊に組んだ。丸山五段が26手目☖3二飛とし、いよいよ力戦相振り飛車が確定。結局お互いの左銀は3六の地点で交換することになり、☗3六同歩の形が☖3二飛の筋なのでやや後手がポイントを挙げたように見える。しかし藤井五段は穴熊、丸山五段は居玉であり、良い勝負だと思う。

ここからしばらく隙を見ながらじりじりとした展開が続くが、54手目☖4四銀を見て藤井五段が急遽動く。☗6四歩☖同歩☗同飛!で☗4四銀が浮き駒になるのを狙う。丸山五段は取れる飛車を取らずに☖4五歩と銀取り。さらに藤井五段は☗4四角~☗4五銀!と大捌きに出た。突然激しい攻め合いになったが、攻め合いになれば玉形の差が活きる。63手目☗5四飛の局面は角銀交換の駒損だが、藤井五段が上手く戦機をとらえたと見たい。

しかし続いて☖4三銀に☗6四飛と寄った局面は☖2六歩が激痛で、いきなり終わってしまった印象がある。☗同歩は☖2七歩☗3七銀☖5五角が詰めろ飛車取り。☗5九飛だったらどうなっていただろうか。

堅陣を活かし自ら主導権を握りに行き、それが奏功したと思った将棋だけに無念だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

印象通りいきなり後手勝ちになっていたが、後手に振れた瞬間は☗6四飛ではなく☗3七桂のところであった。☗6四飛☖2六歩の局面で、確かに☗5七歩☖2七歩成の攻め合いは考えられるところで、しかしやはり成算が持てず☗3七桂の予定変更があったということかもしれない。ちなみに☗6四飛に代えて☗5九飛には☖5六歩や☖5三歩と打たれてみると、大捌きに出た割には戦果が上がっていない。もっと先手が良いと思ったが実際は難解な局面であった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第13回早指し新鋭戦(主催:テレビ東京)