1995/6/23 藤井猛六段—有森浩三六段(順位戦)

感想

第54期順位戦B級2組が開幕する。C1を全勝1期で抜け、一気に舞台が上がった。

初戦の相手は有森浩三六段。初手合いだ。4手目☖3二飛を見て相振り飛車を準備してきた印象を受ける。戦型は先手向かい飛車+金無双、後手三間飛車+美濃囲いになった。オーソドックスな形と言える。

藤井六段はと5筋の位を張り、あらかじめ角交換の筋を防いでおく。浮き飛車は角交換したときに飛車の方が処置が難しい。

43手目、早くも有森六段が仕掛ける。☗9四歩~☗9三歩は一見継続手が無いようだが、ワンテンポ遅れて☗9七桂から端を狙う筋だ。通常攻めかかる時は溜めに溜めた力を解放するように一気に攻め立てるものだが、相振り飛車のこの攻め筋は、プロの棋譜並べをしていて初めて知った。ただこの場合は☖9五歩として、☗8五桂に☖9四香と逃げることができる。これは本当に継続手がなくなってしまう。そこで7筋~5筋まで順々に歩を突き捨て、王手で角を飛び出して一歩を入手し、左銀を進出させて☗9四歩を狙った。多く後手に歩を渡してしまうものの、うまく手を作った。

62手目からは藤井六段のターン。飛車を中央に回り5七の地点を狙う。☗4六歩に☖4五桂は☗4七金寄で意外と次の手がない。☖5六歩~☖6六歩が小粋な手筋。次の銀出が強烈で、歩と打った効果で☖4六銀と出る筋が生まれている。有森六段は角と銀を刺し違えて☗6六銀と飛車に当てながら5七の地点も厚くして受けるが、構わず☖5七歩成~☖同飛成で攻めが繋がっている。そして76手目、先ほど成立しなかった☖4五桂が実現した。

角2枚で金無双を攻略するやや珍しい形だが、強烈だ。

藤井六段快勝。結局☗8五銀と出た後、☗9六歩と打つ暇がなかったところに藤井六段の攻めの厳しさが現れている。B級2組でもまた順調な滑り出しを見せた。

評価値

評価値(YaneuraOu(tournament128-cl4) NNUE 20240528/tanuki-wcsc34/1手15秒)

藤井六段快勝譜と思ったが、それ程形勢は離れておらず、むしろ終盤先手に振れている時間もあった。手の流れを見ても両対局者先手良しと思っていたのではないかと思う。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第54期順位戦B級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)