1995/12/15 中原誠永世十段—藤井猛六段(棋聖戦)

感想

中原誠永世十段との戦い。対戦成績は藤井六段の0勝1敗で、前局では中原永世十段の強さを見た。

本局、17手目☗6八銀としたことで対居飛車穴熊がなくなった。ここ最近対居飛車穴熊の作戦選択に苦慮していたため、少しホッとした気持ちになる。しかし相手は永世十段、大事な将棋であることには違いない。

戦型は藤井六段の四間飛車に中原永世十段の☗4五歩早仕掛けとなった。

☗6八金型であり☖7四歩が入っているが、34手目藤井六段は☖2四同角。この頃の藤井六段は☖2四同角と対応することが多い。

46手目☖8三銀は強気。先手から動いていける筋があるので相当怖い。中原永世十段もチャンスと見て☗2五桂から仕掛けていった。そして57手目☗3二飛で王手角銀取りがかかった。☖8三銀を咎められたようだが、藤井六段の指し手のテンポが良く、これでもやれると見ているようにも思う。とは言え63手目☗2一飛成の局面は、金当たりであり、右桂は捌かれており、先手の方がやや良いのではないかと思った。

金取りを防ぐ必要があるが、☖7二金ではなく☖7二銀打。後手陣が圧倒的に堅くなったが攻めが細い。どうするのかと思ったら☖6五桂~☖7五歩だけで嫌みがついた。特に☖6五桂は☖7三玉と逃げられるスペースも作っており攻防手となっている。そして78手目☖7六歩と取り込んで先手陣も危なくなった。

79手目☗6三銀は確実な攻めだが、後手はもう1手余裕がある。先手玉への寄せがあればというところだが、あまり駒は渡せない制約がある。ここで☖7七歩成という軽手があった。☗7七同角は仕方ないが精算してさらに☖8五桂と攻め立てる。85手目☗5九金打は最後の抵抗だが、ここで16分じっくり考えて読み切っただろうか。飛車は逃げず、92手目☖7九角という決め手を放った。逃げ道封鎖とともに、☖6四角成がある。☖7七歩成から長い手数ではあったが、藤井六段が見事な着地を決めた。前局負けた中原誠永世十段に勝ったという心理面も大きかったと思う。

一見先手が良さそうに見えた中盤だったが、☖6五桂~☖7五歩~☖7六歩で一気に難しくなっており、不思議な感覚であった。『最強藤井システム』によると65手目☗9五歩のところでは☗3七銀から受けに回った方が良かったとのことだ。

評価値

評価値(YaneuraOu(tournament128-cl4) NNUE 20240528/tanuki-wcsc34/1手15秒)

先手が良さそうに見えたところもほぼ互角であった。藤井六段の大局観が大変勉強になる。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
  2. 藤井猛著『最強藤井システム』(日本将棋連盟)

棋戦情報

第67期棋聖戦二次予選(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)