1991/7/10 藤井猛四段—池田修一六段(全日プロ)

感想

池田修一六段との戦い。

☗7六歩☖8四歩☗6八銀という意表の出だし。今日はこの形で行くと決めていたのだろうか。私は今まで相居飛車を全く勉強してこなかったので、池田六段の駒組みがどれだけ意外性を持つのかよく分からないが、居玉のまま☖6四歩、☖7三桂、☖6三銀、そして☖5二飛はあまりにも攻撃的だ。やや力戦調になり、藤井四段もさすがに早囲いではなく☗7八金から☗5七銀と分厚い総矢倉に組んだ。

池田六段は結局右玉のような形になったが、仕掛けがないのでは先手玉が堅くて遠く、藤井四段の作戦勝ちに見える。少なくとも先手が勝ちやすいと思う。☗6八銀左はこの形における常識的な形なのだろうか。藤井四段の対応はあまりにも冷静で完璧に見える。特に☖6五歩に☗同歩(55手目)と取れるのには感動した。

駒の損得無しで角を捌いた78手目の局面は、玉の堅さ、駒の効率(☖2二の金が遊び駒)、そして何より手番を握っており藤井四段が勝勢に近いのではないか。池田六段の☖6九銀(82手目)という勝負手があったが、これに対しても冷静だった。飛車も桂馬も渡しても大丈夫と見切り、ぴったり寄せた。

自然な手だけを積み重ね、静かに勝ち切った藤井四段の美しい将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手15秒)

もっと手前から先手に振れていると思ったが、評価値上は互角の時間が長かった。先手に振れ始めたのは☖3五同歩(62手目)だった。先手の注文通りになったということで、☖2二同金(78手目)の局面は1000点を超え、その後も危なげなく離れていく。藤井四段の快勝譜だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第10回全日本プロトーナメント(主催:朝日新聞)