1995/2/2 安西勝一五段—藤井猛五段(棋王戦)

感想

振り飛車党安西勝一五段との戦い。過去藤井五段の2勝0敗で、前局は駆け引きの末相矢倉になった。

本局は安西五段の四間飛車に藤井五段の居飛車穴熊。安西五段は早めに☗2八玉に囲い、☖7四歩を見て☗5六歩~☗5五歩と早めに動いてきた。軽い捌きで気持ちが良い。ただ、安西五段は☖8五歩を待たずに☗7七角と上がったため、☗7七角と上がった一手が損になっている意味があり、藤井五段は上手く穴熊のハッチを閉めることができた。

ゆっくりすれば穴熊がどんどん固くなっていくため安西五段は積極的に動いていく。47手目☗7三歩成☖同銀と銀をバックさせてから☗5五銀と出て、中央を掌握した。振り飛車快調な流れかと思ったが、50手目☖8五歩が戦線を拡大する手で参考になる。

☗4六歩~☗4五歩と4筋の攻めが厳しいが、敢えて☖2四角と利きの数を減らし、大模様の裏を突くように☖5六歩と垂らしたのが見事。

☗4四歩☖4二金引となりさらに振り飛車の模様が良くなっているが、穴熊が遠く、直接響くのはまだ先だ。☖8六歩、☖5六歩という手が入っているのが大きく、攻め合いを見込める形になっている。

安西五段は☗2六歩から角にプレッシャーを掛けていくが、玉頭の歩なのでやや非常手段気味に感じる。この間に62手目☖8二飛となっていよいよ居飛車は猛攻の準備が完了。そして☗2五歩の催促を待つようにして☖5七歩成から攻め合いが始まった。

75手目☗5三歩成。「5三のと金に負けなし」という格言があるがまだ穴熊が遠い。逆に☖2六香の痛打が入った。安西五段は☗4四角~☗6六歩と竜の利きを遮断して粘ろうとするが、あっさり☖6六同竜☗同角☖同歩と精算。90手目☖2四桂!の妙手からあっという間に寄せた。

本局は藤井五段の、居飛車穴熊の戦い方を知り尽くしたような指し回しが参考になった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

攻め合いが始まってからはどんどん差が広がっていった。良くなってから勝ちになるまでが非常に短く、あっという間に決めた印象だ。快勝譜。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第21期棋王戦(主催:共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟)