感想
田中魁秀八段との一戦。田中八段は佐藤康光九段の師匠。本局が初対戦。これまでの順位戦成績は、田中八段が2連勝、藤井六段が1勝1敗。
戦型は藤井六段の四間飛車に田中八段の5筋位取り。
29手目☗4八飛に78分も考えたのは、宮坂幸雄八段戦(1995/3/1・NHK杯)のような3筋に位を取る指し方もあり、今後の方針をじっくり練り、それぞれ深く読んだ時間だろうか。順位戦、じかんはたっぷりある。
田中八段は銀2枚で抑え込んでくる形。これは『四間飛車を指しこなす本 第3巻』(河出書房新社)や『四間飛車の急所 第1巻』(浅川書房)に解説がある上、佐藤秀司五段戦(1995/1/24・順位戦)の実戦例もある。
38手目☖4三金が問題の一手。これは4筋の捌きと☗2二角成の組み合わせが強烈で、☖4三金が浮く変化がある。これを実現する41手目☗5六銀が強烈な一手。
押さえ込まれる寸前で大捌きに出る振り飛車らしい反発で、振り飛車勝勢と言える将棋になった。前述の佐藤秀司五段戦では、この変化を避けるために☖4二金上という手が指されていた。
53手目☗6四歩も小味な手筋で、捌いた後も自然で快調な攻めが続く。それだけ振り飛車が良い形ということだ。藤井六段はこのまま押し切り、わずか65手で勝利した。終局時間は15時35分。前節の敗戦の悔しさを吹き飛ばすような快勝だった。
評価値
序中盤はほぼ互角。51手目☗4八飛の局面は先手を持ってみたいと思っていたが、そこも互角のようだ。55手目☗5六歩から後手に振れていた。ここでは☗1六歩の地獄突きがあったという。それで良くなるかどうかは分からないが、序盤の☖1五歩を逆用できれば気分は良い。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
- 藤井猛著『四間飛車を指しこなす本 第3巻』(河出書房新社)
- 藤井猛著『四間飛車の急所 第1巻』(浅川書房)
棋戦情報
第54期順位戦B級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)