1995/10/24 小倉久史五段—藤井猛六段(王位戦)

感想

振り飛車党、小倉久史五段との戦い。過去の戦績は藤井六段の1勝。

前局は小倉五段が振り飛車、藤井六段が居飛車の対抗形となったが、本局はまさかの横歩取り3三角型。『藤井猛全局集 竜王獲得まで』には横歩取りは3局しかないが後手を持っているのはこの1局のみ。

藤井六段は26手目、陣形の整備はそこそこに☖1五歩と意欲的に端に位を取った。

これにより☗7六飛と回られたときに端攻めと☖5四角を組み合わせた攻め筋が生まれている。36手目☖2五歩と飛車を追った時に☗6六飛と逃げたが、これは端の位を取った効果だと思った。そのまま☖2四飛☗2七歩の交換が入って後手もまずまずの展開だろうか。

41手目☗8五歩の局面は先手も☗8六飛と回る味が生まれた。☖8三歩と打つことになればお互い手の出しづらい将棋になりそうだ。藤井六段はここで☖7四歩と突いて、あくまで☗7六飛と回れない弱点を突きに行く。

しかし☗8三歩成の軽手があった。☗4六角の筋があるがやむを得ない。藤井六段は角を打たせて☖8四飛と飛車の成り込みを見せて勝負した。☖8四飛に☗8五歩はじっと☖7四飛としておいて次に☖7六歩があって駒損しても戦える。そのため☖8四飛に☗9一角成☖8九飛成と突然お互い成駒を作る戦いに突入した。ただし駒得を先にするのは先手であり、51手目☗8四歩も厳しい。部分的には小倉五段の攻めの方が刺さっているように見える。

52手目☖8八角はそんな雰囲気をぶち壊すような勝負手だった。

こんな手があったか。☗6八玉として耐えるが☖9九角成~☖7六香で攻めが繋がりそうになった。小倉五段は57手目☗8八銀打と頑張るが、☖同馬と取って、☗8八同金は☗7七桂成から攻めが続いてもおかしくない。☗8八同銀と取ったが、今度は☖6九銀が厳しい手となり駒を取りながらの寄せとなった。

ただし後手陣も崩壊しているのでうっかりはできない。☗7二と~☗6三飛成から危険な筋がある。それを解決したのが68手目☖6八成香からの寄せだった☗同玉は☖7七銀から飛車を外すことができる。そして最後は☖7九竜の合駒請求があり、これで銀を使わせたことで後手玉が寄らなくなった。

相居飛車の将棋であったが、序盤から意欲的に端を取った構想や、強手☖8八角からの寄せが印象に残る将棋だった。

評価値

評価値(YaneuraOu(tournament128-cl4) NNUE 20240528/tanuki-wcsc34/1手15秒)

☗8三歩成から先手に振れていた。☖8八角の勝負手に☗6八玉としてから一気に後手に振れた。じっと☗8三歩成として、☖7九角成とされても受けがあったと言うが非常に怖い。また58手目☖8八同馬には一見怖い☗8八同金もあったという。並べているだけでもスリリングで面白い将棋だったが、実際お互いどちらが倒れてもおかしくない終盤だったようだ。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第37期王位戦予選(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)