1994/5/16 藤井猛四段—富岡英作七段(竜王戦)

感想

富岡英作七段との戦い。富岡七段も升田幸三賞受賞者の一人(角換わり腰掛け銀富岡流)。

戦型は藤井五段の四間飛車に富岡七段の居飛車穴熊。藤井五段が一段玉+☗3七桂の速攻型を目指しているのに対し、☖5三銀と上がらず、☖3三角から穴熊に組みに行った。☗5六銀まで上がらないと☖4四歩と突かせることができず、☗3七桂の価値を弱めようとしている工夫を感じる。

36手目☖4三金まで、後手は不満無く居飛車穴熊に組めたと思う。

38手目☖7二飛~☖8二飛に対し、藤井五段が☗4四角~☗3三角とすれば千日手。しかし藤井五段がそういう千日手にしたのを見たことが無い。☗2二飛として打開を図る。63手目☗9七角まで行くと、藤井五段も得意の銀冠+☗7七桂+☗9七角まで組めた。36手目の局面と比べると振り飛車がずいぶんやれそうな局面に見える。

68手目☖5二銀は印象的な手。4枚穴熊は崩れるが5三の地点を強化している。81手目、桂+歩2枚入ったのでいよいよ端攻めを敢行。どこかのタイミングで☗3一角成が入ればというところだが、86手目☖1六歩などなんとなく角を切りづらい手筋が飛んでくる。そして88手目☖5三歩と角筋をシャットアウトされてしまった。一方で後手の後手9三角は先手陣に直通している。富岡七段の指し回しに唸る。

ならばと藤井五段は☗1九飛と端に攻め駒を集中させ、☗7五歩から働きの弱い角と働きの強い角を交換するが、☖2四桂~☖1六香でかえって飛車を攻められながら先手玉周辺に火の手が上がってしまった。

藤井五段が悪そうな形勢だが、端に手がついているのでまだアヤはありそう。しかし101手目☗7九飛に☖6五飛が上手い。☗7七飛とできるが☗6八飛成が飛車銀両取り。詰めろをかけながら☗7一飛成とできれば良いが、その手段はなく、☖5八竜と詰めろをかけられて投了となった。後手玉を捕らえるには際どいが1枚足りない。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

37手目の局面はもっと後手に振れていると思ったがそうでもなかった。そして81手目端攻めを敢行したところは、こちらも思いのほか先手に振れていた。藤井五段の☗9七角型が上手く行っていることを喜ぶべきだろうか。☖5三歩とシャットアウトされたところは難解と思ったが、ここも先手が良いと出ている。☗3一角成とできなくても良かった。さらに100手目☖1六香の局面は後手良しと思ったがまだ先手良し。そこで☗7九飛と逃げて実際に後手に振れた。代わりに☗1七歩とすれば良いと出ているが、この歩は後手玉周辺に使いたいため相当打ちづらい。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第7期竜王戦昇級決定戦4組(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)