1992/4/28 藤井猛四段—平藤眞吾四段(天王戦)

感想

平藤眞吾四段との一戦。本局は天王戦四段戦の決勝、勝てば本戦出場の一局。

戦型は藤井四段の四間飛車に平藤四段が穴熊を目指すオープニング。そこから藤井四段がどうするかが注目だったが、☗6五歩~☗7五歩~☗6六飛として立石流の構えにした。立石流は好きな構えなのでこうして藤井先生の実戦で現れるのは嬉しい。対して平藤四段は穴熊にはせず☖3二銀と美濃にした。

32手目☖7四歩は☗同歩と取って、後手は☖同飛とできない(☗8六飛がある)ので不思議な手。先手が一歩得したように思える。50手目☖4三金の局面は一歩得の上、左桂も飛車の抑え込みに役立っており、先手がやや良い分かれではないかと思う。

50手目は☗5五銀と出たらどうなったか気になる。本譜☗7五歩は☖8三銀ならそこで☗5五銀だが、強く☖8五銀と出てきた。ここから平藤四段が意外性のある勝負手を連発してくる。67手目の局面の駒割り飛車桂交換で先手がかなり駒得だが、先手の左金はそっぽに行き、大駒も捌ける見込みがない。☖8四桂は打ちにくそうな桂馬だったが見事に働いている。ここは既に先手が良いという感じがしない。

85手目、藤井四段は銀を犠牲になんとか角を捌いたが、駒の働きの差が大差で後手が良さそう。今渡した銀で囲いを増強されたのが癪だ。最終盤に☖3七歩成☗2九玉の秘技がでたが、今回はその間に後手玉を寄せる手は無かった。108手目☖4四歩や最終手☖3四金など、優勢になってからの平藤四段が憎い落ち着きを見せた。

天王戦という棋戦はこの期で終了した。本局が藤井四段にとって最後の天王戦となった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

50手目の局面は先手が良さそう。85手目の局面も評価値上互角に近い値を示していたが、駒の配置にしても流れにしても、悪さを感じていたのではないだろうか。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第8回天王戦四段戦(主催:十社)