1993/9/29 畠山鎮四段—藤井猛四段(銀河戦)

感想

畠山鎮四段との戦い。この日は藤井四段23歳の誕生日。

畠山鎮四段とは1993年1月に順位戦で戦っている。その対局では畠山四段は天守閣美濃を採用したが、本局は☗6九金型☗4五歩早仕掛けを採用した。

☗6九金型であるため☖2四同角と対応し、畠山鎮四段は☗4五歩☖3三銀とする形に進めた。☗4五歩では☗4三歩もある。藤井四段は高美濃囲いの歩を犠牲に角の利きを逸らし、左銀を中央に活用した。一見驚きだが、これも定跡。☖3三銀の凝り形を解消しながら銀を中央に持っていけるので、振り飛車にとって非常に味の良い手順だ。本譜の攻防については、『四間飛車の急所 第3巻』の「4五歩早仕掛け・6八金型」に詳しい。

55手目に畠山四段がポンと歩を突いて見慣れぬ形に入った。後手の飛車を圧迫しながら☖3三角の筋を緩和しようとしている。藤井四段は強気に飛車で取ったが、そこで端攻めが強烈だった。先手に香車を渡すと☗4五香で飛車が死ぬ。藤井四段はじっと飛車を引いたが、畠山四段は一歩を犠牲に端を詰めた格好で、先手がポイントを挙げたように見えた。

61手目、畠山四段は55手目と同じ場所に再度歩を置き、本局は後手の飛車角を気持ちよく捌かせないようにしていることが分かる。藤井四段も強気に対応し、先手は竜、後手は馬を作ったが、高美濃囲いの歩がないのを活かされ、先に後手陣に火がついてしまった。後手は6筋に厚い陣形を作ったが、この展開では☖6四銀型が活きていない。

藤井四段も先手玉の近くに飛車を打ちおろすことができたが、畠山四段の凌ぎ方が正確で、それ以上攻め込める形にならなかった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

意外にも振り飛車が良い時間帯があったようだが手順を見ても難解で、実際は先手の攻めの方が分かりやすく、対局者心理としては難解か先手良しだったのではないだろうか。


参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第3期銀河戦Aブロック(主催:サテライトカルチャージャパン)