1994/3/4 藤井猛四段—丸山忠久五段(棋王戦)

感想

丸山忠久五段との戦い。藤井猛四段と丸山忠久五段はよく並べて語られることが多く、この二人もライバル意識があったのではないかと思う。このカードは面白い将棋も多い。この将棋が公式戦初対局。

藤井四段の四間飛車に、丸山五段が☖5三銀~☖4四歩~☖3二銀と玉頭に厚みを築いていく構想を見せた。藤井四段もそれを察知し、早めの☗5二金~☗4六歩~☗3六歩と位を取られないようにした。丸山五段は☖4三銀~☖3二飛とし、力戦相振り飛車になった。この指し方は今でもオンライン将棋でやってくる人がいる。

藤井四段は右矢倉に組み上部に手厚い形にした。丸山五段は3筋の歩を切り、そこから銀を上げ、居玉のまま4筋の歩も切った。かなりスピード感がある。

そして手にした2歩で即端攻めを敢行した。

42手目☖2五銀となれば香車を取れる形だが、後手は居玉。☖1六銀も厳しく使える訳ではないので先手が失敗したという図ではないと思うが、丸山五段が序盤からちょっとしたポイントも見逃さないような厳しさを見せたと思う。藤井四段は端を代償に☗3六銀~☗3七桂と、後手の飛車の捌きを抑えながら中央突破の含みも持たせた。端の突破でポイントを挙げた丸山五段はここで玉を囲いに行った。

59手目☗3四歩は角や桂馬を抑え込むような手だが、☖4四角で☖1七角成が受からない。本譜も後で出てきたが、☗2八金~☗4五銀~☗5四銀と手の調子よく銀を働かせることができるが、馬を作らせてしまったのは後手の大きなポイントに見えた。先手の飛車角がなかなか働かない。

藤井四段の☗8六歩~☗8五歩は後手陣の最も弱点になるところを突いて勉強になった。

実際に手になるかどうかはともかく、確かに後手陣の急所が☖8三の地点であると気付かせてくれる。

88手目☖2四歩で銀が死に、後手がかなり良く見えてきた。☗8二歩から手に乗って捌かれた右桂が先手の飛車角を攻める形になったのがつらく、先手玉が☗4八におり、玉飛接近で極めて厳しい攻めになっている。

セオリー通りに丸山五段が寄せに入り、藤井四段が投了した。全体を通して丸山五段の手厳しさを実感する一局だった。序盤から寄せまで、隙を見逃さず、相手の手を一切許さない厳しさだった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

端攻めをされたところは若干後手に振れており、藤井四段の隙を突いて丸山五段が機敏な動きを見せたというところか。藤井四段にとってはつらい展開だったかもしれない。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第20期棋王戦(主催:共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟)