1993/9/21 川上猛四段—藤井猛四段(順位戦) ※千日手局

感想

順位戦第4回戦、川上猛四段戦。藤井四段、川上四段とも2勝1敗。川上四段は今期初参戦。

川上四段は3手目に☗9六歩としたが、その後居飛車穴熊に組みに行った。早くに端歩を突くことで「居飛車穴熊ではない」と見せた意味があるかもしれないが、藤井四段は持久戦にも急戦にも対応できるように駒組みを進めている。また左銀よりも右桂の活用を優先して☗6六歩を突かせるあたり、藤井四段は既に完成度の高い序盤を構築している。

33手目☗5九角に☖4三銀は思わず手を止めてしまうところ。

何も考えないと銀冠を引き締める☖7二金だが、先に☖4三銀とする理由が必ずあるはず。仮に☖7二金だと、☗3五歩☖同歩☗2六角のように動かれるのが気になるということだろうか。それで形勢がどちらかに傾く訳では無いと思うが、穴熊に余計な動きを与えてしまうのは得策ではない。

そうして川上四段はがっちり四枚穴熊に、藤井四段は四枚銀冠に組んだ。そこからは千日手模様の手順が続く。千日手模様でも80手目☖5二金としたところなど、藤井四段は☖6一飛からの仕掛けも考えていたのではないか。少しずつ時間を使いながら、どこででも喰らいつくような手を狙っているように見えるのが良い。時間を使うのは一局勝負としては損かもしれないが、実戦で思考を積み重ねていく棋士の方が好みだ。

長く手は続いたが、結果は千日手。あっという間に千日手模様になってしまい面白みに欠けているようでも、34手目☖4三銀のように藤井四段が居飛車穴熊の動きを丁寧に封じた結果と言うことだと思う。

消費時間は川上四段が1時間22分、藤井四段は3時間52分。2時間30分の時間ハンデを背負って指し直し局に臨む。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第52期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)